世界の底流  
ドーハ国連気候変動会議

2013年2月17日
北沢洋子

昨年11月26日〜12月8日、カタールの首都ドーハ市内の「カタール国立会議センター(QNCC)」で、195カ国、参加者数17,000人というマンモスの国連気候変動条約会議(COP 18)が開催された。この会議は、@ 締結国に拘束力を持つ京都議定書の2012年以降の延長、A 「グリーン気候ファンド(GCF)」の資金をいかに確保するか、という2つの差し迫った課題があった。

会議の前半は、専門家レベルの議論に費やされた。12月4日以降は、上記の緊急の2大課題について、閣僚級の代表による本格的な交渉の場となった。しかし、COP18は最初から、解決の望みのないことが誰の目にも明らかであった。会議場の外の温度は30度を超えていたが、代表もオブザーバーもさっぱり熱意を持っていなかった。

というのも、気候変動会議の主要なプレイヤーである先進国が、新たな公約をする気がないばかりか、これまでのコミットメントでさえもほほかむりする気でいたからだ。

一方、科学者たちは、すでに、2012年にと予即していたよりも地球の温度の上昇が早くはじまっており、海面の水位も上昇していると警告していた。世界は、米国のサンデー・ハリケーンのように、極端な災害を起こっている。

市民社会は、今回の国連会議が、これらの問題を解決しようとするのではないかと期待していたが、世界のリーダーたちは、駆け引きすることを止めて、文明と人類の生存のために、本気で取り組まねばならない。

まず「京都議定書(KP)」だが、2012年以後についての同意がない限り、その運命も危ぶまれる。2012年に終わる「KP」は、米国が署名しなかったとはいえ、締結国にとっては、拘束力を持つ協定である。また2013年1月から発効する新しい議定書が必要である。

2011年12月に合意した「COP17」の「ダーバン・プラットフォーム」は、2015年までに新しい協定を締結することを採択した。しかし、2013年から15年までの間をどうするかについては、取り決めはない。第2次「KP」が必要だ。

科学者の予測、気候の現況、途上国からの要請などからすれば、先進国は、1990年レベルの45〜50%のCO2発生を削減しなければならない。しかし、先進国の間は一致していない。17〜25%の削減、それに1990年レベルではなく、米国のように、より最近の年度を主張する国もある。

EUは、すでに20%の削減を達成したと主張している。しかし2013〜15年については新たなコミットメントを拒んでいる。ニュージーランド、日本、カナダは「KP」からの脱退と新たなコミットメントを拒否している。

先進国がCO2削減を主張する時、経済危機を理由にしている。ます、経済成長と生産力の回復を実現し、雇用を増やすことが先決だと言う。ドーハCOP18では、途上国の被害を弁償するための資金の調達というもう1つの議題がある。途上国(77カ国+中国)は、先進国に対して「グリーン気候基金(GCF)」に300億ドルの拠出を要求している。しかし、これまでのところ、その6〜9%しか集まっていない。途上国側には、この基金への拠出は、ODAに含まれるか、または、以外にということについては、混乱がある。また、2013〜20年のコミットメントはない。これについての合意やロードマップはない。また、途上国が要求している2020年以降の年間1,000億ドルについても合意していない。

コペンハーゲンCOP15(2009年12月)やカンクンCOP16(2010年12月)での合意はすべて破られた。そこでは先進国は2012年までに300億ドルをGCFに拠出すると約束しているが、実質は30億ドルに過ぎない。オーストラリアは280億ドルを拠出したと主張しているが、その計算の算出法は全く間違っている。GCFは既存のODAとは別の基金であることを忘れている。そしてGCFは、融資ではなく、贈与であるべきだ。先進国はわざとこれら解釈の混乱を放置している。その結果、現在、GCFは空っぽである。

また、GCFを世銀の信託下に置こうとしている。これも途上国が反対しているところだ。また、先進国は、民間企業をGCFに関与させようとしている。つまり、企業がGCFを使ってビジネスを拡大しようというのである。途上国はGCFを議定書締結国(COP)のもとに置くことを主張している。